2017年7月2日日曜日

あま市防災カレッジが終了しました

最終日はHUG(避難所運営ゲーム)でした

あま市防災ネットの山下です。
あま市防災カレッジ、3週目となった前回に引き続き4週目の最終回もあま市防災ネットでお手伝いさせていただきました。
前回はDIG(災害図上訓練)を行い地域でどんな災害が起こりうるか、どこに避難所があるかなどを各地区で話し合いました。
自分の地域を俯瞰で見ることで対策の知恵を得る事が出来ましたので今度は目線を下げて被災した地域で避難所を市民が運営するための想定体験としてこのHUGを行いました。


運営開始!すぐに問題続出

HUGでは様々な避難所で起こりうるシーンや避難者をカードに記して一つずつめくっていき避難所の運営責任者や受付になって一つ一つの状況に対応をしていきます。
冷静で的確な人道的判断とその判断スピードが問われるのがこのゲームの特徴です。
私がファシリテーターを担当したテーブルでは以下のような問題があり、それに対し行った判断を記させていただきます。皆さんも災害時の避難所でこのようなシチュエーションが起きた際の判断にご活用下さい
・役割分担
今回はリーダーとカードの読み上げ係だけの役割分担でしたが、実際には避難所毎に以下のような避難所運営委員会の班分けが必要となります。詳しい班分けや役割はあま市を知るのページで紹介しているあま市避難所運営マニュアルを参照にしていただけると良いかと思います。
・対策本部
今回は体育館の受付付近に対策本部としましたが、実際の避難所は訪れる避難者に一人でも多く場所の確保をしたい、マスコミ等への取材対応などを考え応接室や会議室などの1室を確保するという考え方もあります。
・レイアウト
小学校を想定した避難所運営でしたので体育館をまず町内ごとに区分けする事を行いました。HUGでは東西南北の名前が入った町名でしたが実際はもちろん違いますので体育館内を出来る限り近い町内で集めたり、さらに言えば地図上の町内と同じ配置にするなどわかりやすいレイアウトを心がけると良いかと思います。また通路は天井照明器具の真下を主に使い(震災の場合は落下の危険があるため)、ステージや器具庫への通路確保も必須とする。
また屋内に居る事への不安からテントや車中で生活したいという方もいるためグラウンドも駐車場とテントが張れるようレイアウトを早めに行うと良いでしょう。

・トイレ
被災状況によっては電気のない状態で流せば浄化槽が壊れてしまうという問題に直面する事もあります。そのため避難所準備の初期段階でトイレの状況を確認し、使用が不可能であれば使用不可にしたりゴミ袋を被せ災害用トイレの土台として使用するなど活用法を考えます。また工事現場や屋外イベント時に設置されるような電話ボックス型の仮設トイレが使用出来るようになった時はバケツの水で定期的に流す事が必要になるかもしれないとプールの水を雑用水として使用出来るようプール近くに設置しておりました。
屋根も囲いも無い簡易トイレは体育館のステージ横にあった器具庫を選択しましたが、器具庫も道具がいっぱいしまってある事と臭気対策が出来たとしても使用済み便袋を体育館内を通って運び出すのは袋衛生管理上気になる所ではありますので簡易トイレ用テントやパーテーションが事前に準備があればそれを使って外や生活スペースから離れた比較的学校授業再開に影響の少ない個室に設置が可能だったかと思います。
ちなみに炊事やお風呂の場所は衛生上トイレから大きく離しさらに外からの運び込みがしやすいよう学校正門と体育館の間に設置しました。現在は下水道に直結するマンホールトイレの設備が進んでいる地域もあります。
それでもトレイに関する問題は大きくあるため各地区で簡易トイレを購入したり、各家庭で携帯トイレを確保するなどの準備も必要なのが実状です。
・傷病者
今回は多少のけが人はそのまま体育館の中へ家族と入ってもらいましたが、衛生管理の面からも怪我の状態によっては怪我の手当を受けてから、又は瓦礫の下敷きになっていたなどクラッシュ症候群になりうる可能性のある方や重症の場合家族と一緒に一旦別室に移動する必要があります。また風邪など感染の疑いのある病気の方も同じように別室に移動する必要があります。治療には保健室の利用をまず考えてしまう方もいますが、お医者さんが避難所に来てくれた時に使用しますのでそれまで使わない方が良いでしょう。
・食料・物資の置き場所
今回は体育館ステージ上を使用しました。避難している人達の目にとまる所だから自分勝手な行動に出にくいだろうという日本人の気質を信頼した方法でした。ちなみに物資の配布は避難所での避難生活をするしない関係なくあま市を知るのページで紹介しているあま市避難所運営マニュアルの様式集の50-51ページにある避難所利用者登録票を提出する事で受ける事が出来ます。受付時に避難所で用意してあるこの用紙に書く形となりますが、このページを両面印刷して予め書ける範囲は記入し、筆記具と一緒に防災バッグに管理しておくと受付もスムーズになるのでオススメです。
・駐車場
今回は長期滞在の避難者はグラウンドにし、あま市にいた時に被災してしまった別の地域の方や観光客、ボランティアスタッフ、マスコミ、視察団など短期滞在となる方の車は職員用の駐車場にするといった用途わけを早い段階で行いました。またグラウンドは正門から体育館までの最短距離をまず車の通路にし体育館内へ物資を運び込みやすくしました。また通路途中の脇に炊事場とお風呂を設置し食料や物資の配給もしやすく考えました。
・ペット
犬や猫といったペット以外にも様々な動物が今は家族の一員として飼われている現代ではありますが、公共施設となる避難所では動物アレルギーの方も居るため人間と同じ場所にペットを避難させる事が出来ません。ペットはゲージに入れて屋外の雨に濡れない所で避難させるか、噛み切れない鎖やワイヤーの入ったリードに繋ぎ遊具などの動かないものに外れないようしっかり縛ってもらう他ありません。また原則飼い主がそのペットの食事や排泄物は管理しますので備蓄には常に意識しておきましょう。



HUGは約60分行い、その後に見つかった課題点を付箋紙に書いてグループ内、さらには全体に発表しました。どのグループも最初にぶつかる問題点は一緒。価値観や地域による考え方の違いからどうしていけばいいのか答えがハッキリしない事も出てきてしまいますが、でも何も決めないというのは一番良くありません。想定をし対策を事前に取っておくことこそ避難所運営の第一歩です。



もっと被害想定を見越した訓練を

現状では防災意識を市民の間に広める事から行っておりますが、防災意識を高める事も同時にしていかなければ災害避難や避難所運営のような家族や町を守るための判断をする力を身につける事が出来ません。
あま市防災ネットとして防災意識の高いメンバーの育成だけでなく防災意識を各地区、各家庭へ広げていけるよう有益な情報発信を引き続き行っていきますのでこのサイトの周知に向け皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。